【 アデノウイルス感染症 】
きし内科クリニック院長の岸 雅人です。きし内科クリニック通信 第18号を発行いたしました。
本号では「アデノウイルス感染症」のお話を掲載いたします。
夏かぜを起こすウイルスで代表的なものに、アデノウイルスと、エンテロウイルスがあります。
今回はそのうちのアデノウイルスについて説明します。
アデノウイルスは温暖多湿の環境を好むウイルスです。そのためアデノウイルス感染症は例年夏に流行を起こします。寒冷乾燥を好み冬に流行を起こすインフルエンザウイルスとは異なります。 アデノウイルスと一口に言っても現時点で1型から51型まで合計51種類もの型に分類されており、種類によって、咽頭炎、胃腸炎、結膜炎、膀胱炎などを引き起こします。
アデノウイルスは、咳やくしゃみなどによってウイルスを含んだ唾液が飛び散ることや(飛沫感染)、タオルの共用などで、手についたウイルスが口や鼻から体内に入ることでも感染します(接触感染)。 乳幼児の感染が多いのですが、睡眠不足や過労、ストレスなどで免疫力が低下すると、大人でも感染します。感染した子供を看病しているうちに家族内で感染してしまうことが多いので注意が必要です。マスク着用や、トイレやおむつ替え後によく手を洗うことで感染を予防できます。
感染してから症状が出るまでの期間(潜伏期間)は5~7日間です。
感染しても何も症状が出ない(不顕性感染)場合から、軽い咽喉や鼻の風邪で済む場合、インフルエンザの様な高熱が出る場合、胃腸炎(下痢・嘔吐)を起こす場合、結膜炎を起こす場合まで症状の程度は様々です。
症状が治った後も、のどからは7~14日、便からは30日間はウイルスを排出し続けることがあります。
症状をこじらせると肺炎や無菌性髄膜炎を起こすこともあり注意が必要です。
妊婦さんがアデノウイルスに感染した場合、アデノウイルスは、胎児への有害事象は報告されておらず、お腹の赤ちゃんに影響を及ぼす心配はありません。ただ、妊娠中は免疫力が低下しているため、アデノウイルスも含めて感染症には注意しましょう。
アデノウイルス感染症の代表的な疾患に、咽頭結膜熱(プール熱)、流行性角結膜炎、アデノウイルス胃腸炎があります。
◎ 咽頭結膜熱(プール熱)
(塩素消毒でアデノウイルスが抑えきれなかった場合は)プールでうつることもあるため、別名プール熱ともいいます。急な発熱、食欲不振、咽頭炎、結膜炎が主症状です。発病から改善まで1週間程度かかります。症状消失2日後まで登校(登園)できません。
◎ 流行性角結膜炎
片方の目の結膜炎で最初に発症し、時間をおいて反対側の目が発症します。症状が消失するまで1~2週間かかります。結膜炎の症状が消失するまで登校(登園)できません。
◎ アデノウイルス性胃腸炎
主な症状は下痢・腹痛で1~2週間程度続くことがあります。ノロウイルスやロタウイルスのような激しい嘔吐を伴う頻度は少ないですが、咽頭炎や結膜炎、頭痛を合併する頻度が高くなります。
いずれも当院のアデノウイルス迅速診断キットで診断できますが、アデノウイルスに対する特効薬は存在しないため、解熱剤、痛み止め、抗炎症剤、整腸剤などで対症療法を行います。
夏かぜにかからないよう、うがい・手洗いで予防しましょう。
2017-06-27 11:06:00
きし内科クリニック通信