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2021年2月号(第61号)【 新型コロナウイルス感染症の臨床症状 】

2021年2月号(第61号)【 新型コロナウイルス感染症の臨床症状 】

【 新型コロナウイルス感染症の臨床症状 】

きし内科クリニック院長の岸 雅人です。きし内科クリニック通信 第61号を発行いたしました。
本号では、「新型コロナ感染症の臨床症状」のお話を掲載いたします。

(本ブログを記載している2021年1月9日時点で)新型コロナウイルス感染症の日本国内の新規感染者数が日々増加しています。

新型コロナウイルス感染症の主な症状は、発熱、全身倦怠感、咳、味覚・嗅覚異常などです。
新型コロナウイルス感染症の潜伏期間(感染してから発症するまでの期間)は、およそ4~6日間といわれています。発症後、インフルエンザのような高熱、全身倦怠感、咳が、数日~2週間程度延々と続きます。時に味覚・嗅覚障害がみられ、新型コロナウイルス感染症に特徴的な所見となりますが、味覚・嗅覚障害はみられない場合のほうが多いです。

ここで、新型コロナウイルス感染症の重症度分類を示します。新型コロナウイルス感染症の予後(命に係わるかどうか)は肺炎の合併の有無で規定されるため、重症度も肺炎・呼吸不全の有無で分けられています。

新型コロナウイルス感染症の重症度は、軽症、中等症、重症の3つの段階に分けることができます。
:明らかな肺炎なし、呼吸不全(低酸素血症)なし。
中等症:肺炎、呼吸不全(低酸素血症)あり。必要に応じて酸素吸入が必要な状態。
:肺炎、呼吸不全のため、集中治療室(ICU)入室、人工呼吸器装着が必要な状態。

新型コロナウイルスに感染しても、約80%の患者さんは軽症のまま経過して治癒します。軽症といってもインフルエンザのような高熱、全身倦怠感、咳が数日~2週間程度延々と続くのですからたまったものではありません。重症化の不安をかかえながら、眠れない夜を過ごすことになります。
約20%の患者さんは、発症後7~10日ごろに、咳や呼吸困難などの肺炎症状が増悪して入院を必要とします。約5%の患者さんは、肺炎・呼吸不全の悪化のため、集中治療室での人工呼吸器装着が必要となります。現時点の致死率は、59歳以下で0.06%、60歳代で1.2%、70歳代で4.7%、80歳代で12%、90歳以上で17%となっています(厚生労働省調べ)。

重症化しやすい因子として、高齢(60歳以上)、喫煙・慢性閉塞性肺疾患(COPD・タバコ肺)、糖尿病、心臓病、肥満、高血圧、妊娠などが挙げられています。今のところ、気管支喘息は重症化しやすい因子かどうかはわかっていません。

また、新型コロナウイルスに感染しても無症状の人がいます。およそ3~4割の人が感染しても無症状であったと報告されています。特に若い人では感染しても無症状のことが多いのではないかと考えられています。例えばアメリカの原子力空母セオドア・ルーズベルトで起こったクラスターでは、乗組員4779人のうち、1271人が新型コロナウイルスに感染しました。この1271人のPCR検査陽性者のうち、45%は無症状、32%が検査時には無症状でのちに症状を発症、そして23%が検査時に症状があったそうです。

新型コロナウイルスを他人に感染させる期間は、発症2日前から発症後7~10日間程度といわれています。新型コロナウイルス感染症は高齢者ほど重症化する傾向がありますが、若年者では普通の風邪と区別がつかないくらいの軽い症状のときもあります。「風邪をひいたら家族や高齢者にうつさないように注意する」ことが大切と考えます。

現時点で新型コロナウイルスに感染した場合、軽症者は自宅隔離、中等症以上の人や、自宅隔離中に肺炎を併発して中等症以上に悪化した人が、新型コロナウイルス専用病棟に入院となります。つまり新型コロナウイルスに感染しても現時点では大多数の人は自宅隔離になります。特効薬が存在しないため、体力消耗を防ぐための解熱剤の内服や、免疫力を高めるために栄養のある食事をとり、自宅で数日間~2週間程度の不安な日々を送ることになります。

当院では、発熱してから約24時間が経過し、新型コロナウイルス感染症を強く疑う場合には、鼻咽頭ぬぐい液を用いて新型コロナウイルス抗原検査を行います。新型コロナウイルスに感染しないように、ひとりひとりが細心の注意を払うことが大切です。私は一医療従事者として新型コロナウイルスに感染した人を出来るだけ早期に診断し、保健所と連携して患者さんの不安な気持ちに少しでも寄り添うことができるような治療を行いたいと考えています。新型コロナウイルス感染症が心配な患者様は、お気軽にご相談ください。 

2021-01-19 08:00:00

きし内科クリニック通信