【 「花粉-食物アレルギー症候群」 ~果物アレルギーと花粉症の関係~ 】
きし内科クリニック院長の岸 雅人です。きし内科クリニック通信 第86号を発行いたしました。
本号では、
「花粉-食物アレルギー症候群」のお話しを掲載いたします。
2月入り新型コロナウイルス感染症の新規患者数はピークを越しましたが、インフルエンザ感染者数が増加に転じています。手洗い、ワクチン接種などの感染対策が大切です。
近年、果物によるアレルギー患者さんが増加しています。果物アレルギーは、以下の2種類に分けられます。
1.
即時型:
乳幼児期に発症。じんま疹、湿疹、痒みなどの皮膚や粘膜の症状、下痢や嘔吐などの消化器症状、息苦しさなどの呼吸器症状が特徴
2.
口腔アレルギー症候群:
学童期から成人に発症。唇や舌、のどの痒みやイガイガなど口腔粘膜に症状を認めるのが特徴。
特に、花粉症を発症した後に果物アレルギーも発症する患者さんが最近増えてきています。これら花粉症に関連した食物アレルギーのことを、「花粉-食物アレルギー症候群」と呼びます。アレルギーは食べ物・花粉・ダニなどの一部の蛋白(アレルゲン)に対して、体が過剰に免疫反応を起こす(感作する)ことが原因です。花粉アレルギーのアレルゲンと果物に含まれるアレルゲンが似ている(交差抗原性がある)ために、花粉症を発症した人が果物アレルギーも発症してしまうことがあるのです。花粉への感作により果物アレルギーを発症する場合の多くは、口腔アレルギー症候群タイプの果物アレルギーとして発症します。
花粉症の原因となる植物は複数ありますが、それに対応して症状のでやすい果物が決まっているのも、このアレルギーの特徴です。「花粉-食物アレルギー症候群」を最も引き起こす頻度が高いのが、春に花粉が飛散するハンノキ・シラカバなどのカバノキ科の花粉症です。カバノキ科の花粉に感作すると、リンゴ・もも・さくらんぼなどのバラ科の果物で症状が出やすくなります。またこのカバノキ科の花粉症患者さんでは、豆乳やもやしなどの未加工の大豆製品でアレルギー症状を起こすことがあります。また江戸川の河川敷に多く植生するネズミホソムギや、カモガヤ・オオアワガエリなど初夏に花粉が飛散するイネ科の花粉症も「花粉-食物アレルギー症候群」を引き起こす頻度が高くなっています。イネ科の花粉に感作すると、メロン・スイカ・キウイなどに反応が出やすくなります。
対応としては症状の出る果物避けることが基本ですが、抗アレルギー剤を内服することで症状を緩和することが可能な場合もあります。また、果物を加熱処理すると、アレルギー症状を起こす蛋白が変性するため症状が出なくなることがあります。「花粉-食物アレルギー症候群」は、患者さんがアレルギーと思っていないことも多く、潜在的な患者さんは非常に多いものと思われます。お心あたりがございましたら、お気軽に当院にご相談ください。
2023-02-13 10:49:00
きし内科クリニック通信