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【 16歳の息子が天国に旅立ちました 】
きし内科クリニック院長の岸 雅人です。きし内科クリニック通信 第88号を発行いたしました。 本号では私事ですが、私の16歳の息子についてお話いたします。
私の息子が2023年3月25日、ユーイング肉腫のため16歳で天国に旅立ちました。
私の息子が渋谷教育学園渋谷中学校3年生であった2021年4月にユーイング肉腫と診断されました。 左の骨盤に発生した骨のがんです。診断を受ける1か月前くらいから息子は左足を痛がっていました。痛み止めや湿布を使っても痛みが治まらないため、何か大きな病気ではないかと考えました。院長(私)の出身大学(東京医科歯科大学)の医師が勤務しているため、東京ベイ・浦安市川医療センターの整形外科に私の紹介状を持参して受診させました。15年以上の診療経験がある整形外科医の診察でしたが、残念なことに湿布の処方のみで様子を見るように言われて帰宅となってしまいました。その後2週間様子を見ましたが、息子の左足の痛みは悪化する一方だったので整形外科に再診を電話で依頼しました。しかし予約がいっぱいだから少なくとも2週間先まで診察できないとあっさり断られました。電話でなんとか診察してもらうように食い下がり、医師になってから数年くらいの若手の先生が数日後に診察してくださりました。そして骨盤MRIを行って骨のがんと診断されたのが、診断に至るまでの経緯です。 診断されたときにすでにがんは肺に転移していました。聖路加国際病院小児科に入院して抗がん剤治療を2か月間行い、がんが小さくなったところでがん研究会有明病院の整形外科で左骨盤の腫瘍を左骨盤ごと摘出しました。その後再び聖路加国際病院小児科で抗がん剤治療と肺への放射線治療を約5か月間行ました。がんはいったん全てなくなり、車いすで2022年1月に自宅退院となりました。聖路加国際病院小児科、がん研究会有明病院整形外科の先生方や看護師、コメディカルの皆様には大変お世話になりました。ここでお礼を申し上げます。 その後息子は必死にリハビリを行い、片杖歩行で数歩程度は歩けるようにまで回復しました。がんになった経験を生かして、がんを治療する医師になりたいと息子は私に言ってくれました。長期間の入院での学業の遅れを取り戻すため、息子は猛勉強してくれました。 ところが神様は残酷なことに、2022年の9月にがんは再発しました。左肺に転移して左肺に胸水がたまった状態でした。聖路加国際病院の小児科に入院して抗がん剤を約2か月行いましたが効果はありませんでした。その時点で完治をめざせる治療法がなくなったため、息子の意志を尊重して最後の期間は在宅で過ごすことになりました。 在宅で痛みに対してモルヒネの投与を行いながらも、息子は常に笑顔と感謝の気持ちを絶やしませんでした。息子の在宅療養を支えたのは、渋谷教育学園渋谷高校のかけがえのないたくさんの友達と担任の先生でした。友達が毎日代わる代わる自宅に遊びに来てくれて、息子の残された時間を有意義なものにしてくれました。担任の先生が息子に感謝の気持ちを大切にするように伝えたくださったためか、息子が最期に私に伝えてくれた言葉が「今までありがとう」と感謝の気持ちでした。息子の成長に涙するとともに、息子の入院から在宅医療に関して全てを一手に引き受けてくれた看護師の妻(息子の母)に感謝します。また、息子の信頼のもとに在宅医療に尽力してくださった、あおぞら診療所せたがやの先生、コメディカルの方々に感謝いたします。
息子が天国に旅立ちました。これからは医師を目指した天国の息子が見守る中で、今まで通り地域医療を行っていきます。息子のおかげで親の不安な気持ちを少しでも多く理解し、人に優しく出来る医師になる機会を与えていただくことが出来ました。息子に感謝の意をささげて本号の締めにしたいと思います。
2023-03-27 18:37:12
きし内科クリニック通信
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