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きし内科クリニック院長の岸 雅人です。きし内科クリニック通信 第99号を発行いたしました。 本号では、「子宮頸がんワクチン」のお話を掲載いたします。 子宮頸がんワクチンは、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぐための予防接種に用いるワクチンのことです。 子宮がんは大きくわけて、子宮の入り口である子宮頚部に生じる「子宮頚がん」と、子宮の奥に生じる「子宮体がん」の2種類に分類されます。子宮頸がんは主に、性交渉によるヒトパピローマウイルスの感染により生じます。子宮体がんの原因は女性ホルモンの分泌に関係しているといわれていますが、詳しい原因は現時点ではよくわかっていません。ヒトパピローマウイルスに感染しても約90%の人は子宮の細胞に異常をきたしませんが、ごく一部の人は前がん段階(子宮頚部異形成)を経て、数年から数十年かけて子宮頸がんになります。 日本では、年間約10,000人の女性が子宮頸がんに罹患し、約2,900人が子宮頸がんによって死亡しています。日本における子宮頸がんの罹患率および死亡率は年々増加傾向にあります。20〜30歳代の世代における女性特有のがんについてみてみると、乳がんや卵巣がん、子宮体がんと比較して、子宮頸がんの罹患率は増加傾向にあり、子宮頸がんは別名マザーキラーともいわれています。また、死亡率においても、他のがん種ではほぼ横ばいの推移となっている一方、子宮頸がんの死亡率は増加傾向にあります。 子宮頸がんワクチンの目的は、ヒトパピローマウイルスに対する免疫を作ることです。ヒトパピローマウイルスには200種類以上もの型が存在し、そのうち少なくとも15種類(ハイリスク型)が子宮頚がんの発生に関わっています。子宮頸がん全体の50~70%はヒトパピローマウイルス16型と18型が原因といわれています。現在、日本で認可されているHPVワクチンには、2価ワクチン、4価ワクチン、9価ワクチンの3種類があります。2価ワクチンは16型と18型に対するワクチンで、ワクチン接種後に抗体価が20年以上持続します。4価ワクチンは16型と18型に加えて、性感染症の尖圭コンジローマの原因の約90%を占める6型と11型の計4つの型に対するワクチンになりますが、抗体価は約5年しか持続しないといわれています。9価ワクチンは6・11・16・18型に加えて、ハイリスク型の31・33・45・52・58型の感染を予防することができ、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルスの88.2%をカバーするとのデータが出ています(Sakamoto J et al. Papillomavirus Res. 2018)。また、9価ワクチン接種後に抗体価が5年以上持続することが現時点で確認されています。 子宮頸がんワクチンは、2013年4月に定期接種となりました。しかし子宮頸がんワクチン接種後に、ワクチン接種との因果関係が否定できない持続的な全身の痛み、歩行障害、けいれん、自律神経障害などの症状を認める患者様が散見されました。そのため、同年6月に定期接種の積極的推奨を控える通知が厚生労働省より通知されました。その後接種による副反応として疑われた歩行障害やけいれん、痛みや自律神経障害などの症状については、国内外で数多くの研究が行われ、HPVワクチンとの因果関係は示されませんでした。そのため2021年11月26日付け厚生労働省健康局長通知により、定期接種の勧奨が再開されています。 子宮頸がんワクチンの対象者は小学校6年生~高校1年生相当の女子で、予防接種法に基づき無料接種を受けることができます。対象年齢を過ぎた女性でも、1997年4月1日以降に生まれた方は、2025年3月31日までは無料で接種を受けることが可能です。予防効果の観点から26歳までは接種が推奨されています。接種スケジュールは、15歳未満の女子は初回・6か月後の合計2回の接種を行い、15歳以上の女子は初回・2か月後・6か月後の合計3回の接種を行います。子宮頸がんワクチンの接種後に起こりうる症状として、接種した部位の痛みや腫れなどの局所反応がありますが、多くは数日以内に改善します。また、アナフィラキシーは約96万回に1回とまれですが、念のため接種後30分はクリニック内で様子をみます。接種の痛みや不安で一時的に気分が悪くなったり、血管迷走神経反射(失神など)を起こしたりすることもあります。以前に注射や採血で血管迷走神経反射を起こしたことがある人は、事前にお伝えください。 当院では、現在は(最も子宮頸がんの予防効果が高い)9価ワクチンを接種しています。子宮頸がんワクチンについてわからないことがあれば、お気軽に当院にご相談ください。
2024-03-11 13:06:11
きし内科クリニック通信
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